ヒルマ・アフ・クリント
今ロンドンのサーペンタインーギャラリーで開催されている絵画展、Peinting the inseen-Hilma af Klint (見えない物を描く)ヒルマ・アフ・クリントが素晴らしい。この人の名前とシュタイナーがくっつくとああ、あののヴェネチアビエンナーレの展示であった人ね。とわかる。
アフ・クリントが生まれたのスエーデンでは女性が画家になる事はかなり勇気のいる事だったと思う、しかし同時にスエーデンはフェミニズム運動では進んでいた。彼女は美大時代に出会った他の4人の女性と共に「5」と言うグループを作り活動した。(他の4人の方の絵も見たい)末のスエーデンで女性。と言うと私の少ない知識でいうと「ニルスの不思議な旅」の作家セルマ・ラーゲルレーヴ。彼女はフェミニズムの運動家だった。そして「長くつしたのピッピ」のアストリッド・リンドグレン、と巨匠が並ぶ。隣りのデンマークではイプセンが「人形の家」で自立する女性の姿を描いた。そこらへんまでしか知らない。知識に少ない事を悔やみながら、フェミニズムの運動ではスエーデンは進んでいたのだろうな、くらいの知識で絵を見て行く。
正方形のキャンバスが多い、テーマは世界の秩序と進化
彼女の絵は珍しいなあ、こんな構図の絵を描く人がいるのか。と思い説明を見ると彼女は神秘主義の影響を受けていた、と言う。黒と白に分かれた構図はインとヤン。彼女はシュタイナーの新譜神秘主義に影響されたとも書いてある。そういう意味では同じヨーロッパのスイスの女性エマ・クンツ(Emma Kuntz)の繊細な図形にも共通点我ある、2人の女性は出会った事があるのであろうか。もしもスエーデン語ができたら研究したい作家である。観念とか宇宙とかをテーマに戦ったのだからすごい。
あの時期にヨーロッパとアメリカで神秘主義が生まれたのはどういう背景があったのだろうか、産業革命に対するリアクション?これはかなりあったらしい、イギリスのビクトリア女王は機械を貧しい人々から仕事を奪う悪魔と呼んだらしい。リアクションとして合理性だけじゃダメだよ、と言う事が言いたくて神秘主義やソローみたいに森に帰れ、と言うエコロジーを唱えた人たちもいた。それが今のエコロジーの元になっていると思う。ソローは尊敬に値する人間だと思う。あの時代は科学の目覚ましく発展した時代でもあり、H Gウエルズのタイムマシンが出版されたり、アインシュタインに繋がる科学者達の発見に世間が湧いていた時代でもある。
几帳面な性格だったのが伺える彼女のノート、字の並び方がきれい
私が感動したのは絵がとても良い事、一見変わった絵なのだが図形と絵の間とも言うべきか、しかしデザインではなく絵画である。しかも、多分、生前あまり認められなかったような気もするがそれでも彼女が目に見えない物、それは宇宙の摂理であったり、するのだかそれを可視化するべく一生をかけて描き続け1000枚の絵画を残した。ことだ。
今回は8枚しか展示されていなかったが10枚の巨大な絵はたてが3メートルはある大作で、自分で紙をキャンバスに張り付けてある。つまり専門家ではないから紙が波打って、かなり苦労している後が見える。
だいたい巨大な作品ではボードの春だけでも大変難しいのに、キャンバスのような不安定なベースに貼るのは無理がある。そんな事ばかり考えながら見てしまう。
肝心なタイトルは幼年、青年、壮年、老年、と言うことだが、私は日本の友禅の模様に見えてきた。色と言い、模様と言い、大正時代の友禅である、なにか懐かしい物を感じた。
日本の美術館ではなかなか見られないし、ギャラリーも力不足でこのような隠れた作家を持ってくる事ができない。だからここで見る事ができてしあわせである。世界の美術館でもあまり展示していると言う情報はない、やはりマイナーな人なのだ。でも惹き付けられるものは十分あるし、誰かの家を訪問してこんな絵が飾ってあったら私は絶対気になってしょうがなくて質問するだろうし、持ち主のセンスに嫉妬するだろう。
ついでに、というかあのヴェネチアの展示でアフ・クリントと同じ部屋にあったエマ・クンツの絵をお見せする。
この女性は美術教育を受けた事がなく、ヒーラー、霊の力で病を治すのがせんもんだったらしい。とても霊感の強い人だった、という。
全く美しく、見入ってしまう。
ここまで図形の美しさの話になるとアグネス・マーティンの作品も同時に見たくなる、昨年テートモダンで開かれた大回顧展は見事だった。単純な図形画これほどの静かな感動を呼び起こせる物か不思議である。
(彼女の絵は簡単にネットで見つかるので興味があったらのぞいて下さい)
この3人の女性で抽象図形画の三役そろい踏み、(え、相撲?何を言ってるんだろう私)がとにかくそろった訳でわが空想美術館として大満足である。