ソビエト革命のあだ花、そしてパオロッツィーのバラエティな芸術人生
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松山 朋未 個展「とこしえ_る」
開催2012年11月23日(金)〜25日(日)
ちくちくちくちく・・・・針に糸を通し、布に刺していく。
「針」という言葉にはとても多くの含みとシンボルがある。針仕事というと家の中にいる女性を思い浮かべる。女の細い指でこれまた細い金属の針を持ち、刺す。
「刺す」という言葉もこれまた含みの多い言葉だ。一点に集中する力。死ぬ気で刺す。突き刺す。とどめを刺す。指針。方針・・・
刺すのはポイント、点、だから面積はなくて、ほとんど見えなくて相手にダメージを与える。思いつめた心が凝縮され、貫くイメージがある。
「布」裸の人類をくるむもの。第二の肌。文明は、「まとう」と「はぎ取る」集約できないか? そして、大昔から布を作るのは女の仕事。
3年ほど前、都立庭園美術館でステッチバイステッチという展覧会が開かれていると知ったとき、上記したようなイメージとアートが結びつけばかなり面白い世界があるのだろうと感心して、見学に行って、期待を裏切らない作品群に出会った。それ以来何となく、針と糸と布で作るアート作品に特に注目していた。
松山朋未さんとの出会いは2011年ラ・ケヤキで開催したハンドメイドマルシェだった。彼女はアクセサリーを出店したのだが、作品のポートフォリオを見て、彼女の作品をもっと見たいと思った。そして数ヶ月後に今回の展覧会が実現した。
人が住んでいる気配のある住宅の部屋ごとに刺繍を展示する。できればそこに女たちがずっと縫物をしている状態で展覧会を開きたい。という彼女の意向であった。ラ・ケヤキの家の特性を利用して、ここでしかできない展覧会をしたい、というのが私の願いでもある。
彼女は点を縫うのが好きだという。縫い始めると止まらなくなってどこまでも刺していてしまうので丸い刺繍枠があると助かる。と言う。その膨大な点の集積。費やした無言の時間。彼女はこれが私のデモです。という。脱原発に大声をあげるのもよい。しかし彼女の表現は母から子へと幸せへの願いを込めた花布巾。マイナスではなくプラスを求める祈りが今回のテーマであった。その意思表明は展覧会のチラシにも書かれたが個展会場に入ると大きな布に一文字づつ丁寧に刺してあった。印刷物では読んでくれなくてもこれなら読んでくれると思って・・・という。以下に転載する。
母親が家の中で子供の服を縫うさまは、
祈りや願いをこめているように見える。
子供の幸せや喜ぶことを願い、作った物は、
その子供専用のお守りのようだ。
日本にはかつて嫁ぐ娘に「花布巾」を持たせる文化があった。
母親が娘の幸せを願い、嫁ぐ際に手渡した布巾は、
娘によって日常の中で使用される。
その娘もまた母になった時に、自分の娘に「花布巾」を縫う。
細かく縫い込まれた「花布巾」も、その娘専用のお守りのようだ。
家の中には家族がいて、想いが縫い込まれたものがたくさんある。
家はまるで「おこもり」のように、願い祈る場所のようだ。
何が起こるか分からない日常は、いくらでも「-」な方向に転換し、
私たちを不安にさせ、時に暴力的にする。
恣意的な考えによって他者を攻撃するよりも、
想いを指先から針に伝えて縫い込む方が、
「+」かつ強い力を発動すると私は思う。
母親から子供へ、といったような絶対的な想いは漠然と強く美しい。
何世代も前からずっとその想いは揺るがずに続き、
それは今後も永久に続いていく。
あまりにも無意識で、あまりにも神々しい想いの一部に、
私はなりたい。
以上である。
「+」はステッチの形でもある。母の愛が絶対か、という論議はさておいて、母親が子供の為に刺す、ひと針ひと針刺していく。というちょっとホラーじみた行動。刺していかないとできない。矛盾か魔除けかは分からないが、布に刺繍するというメディアはパワーにあふれている。大変完成度の高い優れた個展を開かれたことに感心した。まだ20代の彼女はこれからの活動が楽しみな作家である。
1ミリにもみたない赤い小さな点が集積したのち点に昇る。赤い色に希望を感じる
アルファルファの根っこみたいな糸、ご飯のお茶碗にかぶさるように
天井につるされたのはいろいろな母親が手で作った子供服。安く服の買える時代にあえて時間をかけて作る母の気持ちを昇華させるようにオーガンジーで上から糸を縫い込むことでプラスの思いを強調する
黒い服ばかりが集まる、白く細い糸をフリースタイルでうずまくような形を縫う。
そして白い糸は天に昇る
★オープニングイベントとして
今回の展示をイメージしたお食事と演奏のイベントも行われました
11/23(金)
18:00〜20:00 monowanoの山田英季さんによるお食事
19:00〜 エイミーカワウチさん、永田友紀さん、服部恵さんによる演奏
松山朋未さんのサイト
ロシア革命から今年で100年らしい。それで様々な企画が、東京ではエルミタージュが来ていたけれど、ここ、ロンド… 続きを読む
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