12月24日の午後サラヴァ東京で行われたイベント、古川日出男+菅啓次郎 「春の修羅」「銀河鉄道」を読む。
朗読というジャンルがパフォーマンスとして確立したとうれしくも実感させられた。
「音楽に挑戦を仕掛けている。」という、菅啓次郎の言う通り、こんなレベルでやられてしまったら音楽家たちはあわてる。というか襟を正さなくてはいけない、観客をさらっていけるのは君たちだけじゃないんだよ。と作家たちに宣告された気分である。これはライブミュージシャンや俳優たちの危機である、しかし良い危機。作家たちがこんなにうまくできちゃうんだ。というすごい刺激になったと思う。
シンガーソングライターと自称する人たちが時として、言葉がまるで音楽のつけたしのように幼い言語感覚で歌にしてしまっているのが気になる。シンプルかつ深い歌詞を書こうと挑戦する人は日本にもいるのだが、まあ、まれである。この日の午後のようなすぐれた朗読と音楽。こんな贅沢があってもいいじゃないか。いや私たちはガキじゃないんだから、こんな贅沢こそ欲しかったんだ。大人用のパフォーマンスに飢えているのだから。そのために私は器、であるサラヴァを開いたのだ。音楽の小島ケイタニーラブは賢治の故郷、花巻まで行き、町の音や流れる川の音を採取したり、宮沢賢治を感ずるための試行錯誤をしたうえで今回の音楽を生み出した、まさにオーダーメイドの創作。彼はミュージシャンのエゴを捨ててご主人さまである「言葉」をよりよく耳に届けるために最大限どうすればよいか考えつくし言葉のための音楽を作った。
「春と修羅」を聞く時。私たちは震災のことを思わずにはいられない。そして銀河鉄道は我々の煩悩や苦しみを運んだまま天界まで登って行き、最後のメリークリスマス!と全員が呼びかけで舞台は終わった。「そうだ、今日はクリスマスイブだった。」やっと彼らがこの日に演奏したかったわけがわかった。キリスト教でなくてもこの日が博愛の日だというくらいは私も共感している。日本の東北の苦しみが世界の苦しみになって、人々が笑いを分かち合うように痛みも分かちあうことができるように。
この素晴らしいパフォーマンスをサラヴァで初演してくれたことに深く感謝。
これから多くの土地で多くの人々にも共有できることを願います。
このイベントは新しく出た本、左右社の「春の先の春へ」の出版記念でもあります。CDもついてます。これがまたしびれるのだ。
左右社
レコーディングのときの様子は
詳しくは菅啓次郎のHP
来る1月21日(土)「ことばのポトラック」第7回は、畠山直哉さんと大竹昭子さんの対談です。菅さんも朗読で出演なさいます
ことばのポトラック・ブログ
7月9日に行われた、同じく古川さんの朗読で黒田育世さんのダンスと松本じろ、小島さんの映像はこちらで