2015年4月24日 更新

石川竜一のレジデンス in Paris

A0010565_1.jpg by Ruichi Ishikawa

昨日、石川竜一は2ヶ月に渡るパリでの撮影を終えて日本に帰った。まだ撮り足らない、悔しい。と言い残して。

木村伊兵衛賞の受賞が決まって、明日は授賞式に出るはずである。以前書いたレポートを簡単なレジダンスの報告としてアップする事にした。将来、彼の展覧会で作品を見ていただくのが実際の報告になる。

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2015年2月24日の夜10時、石川竜一はパリ。シャルルドゴールの空港にモスクワ経由でやって来た。もちろん首にはハッセルブラッドと買ったばかりのソニーのカメラをぶる下げて。彼にとって初めての海外,ではないが、過去にはアシスタントとしてアジアの国に数日の随行しかしたことがないので,自分の意志で動く海外旅行は初めてだという。

2014年の11月渋谷のアツコバルーで彼の個展、"zkop" http://l-amusee.com/atsukobarouh/schedule/2014/1107.php   を開いて、同時に赤々舎から2冊の写真集を出版。期を前後して新宿のPLACE M, 銀座のニコンサロン。と,新人作家にしては破格の扱い、そして評価を得た30歳の新人である。2014年木村伊兵衛賞の最有力候補でもある。このブログが出ることにはもう発表になっているだろう。

昨年の11月、渋谷のギャラリーに並べられた作品を見るにつけ,私は彼の実力を試してみたい気持ちが湧いて来た。このような真に迫ったポートレートが自分の街の連中に気楽に沖縄の言葉で打ち解けることによって誘い出される画像だとしたら、言葉の通じない国でしかも、人が警戒しあうパリのようなメトロポリスで彼はどうやって狩りをするのか。意地悪な気持ちと、彼の若さと知恵でハードルを乗り越えられるだろう、でもどうやって?と言うのが見たかったのだ。試練を与えるならまだ若いうち、今だ。パリをクリアーできたら世界のどこにも行けるスキルがつけられる。と思った。

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「空港についた瞬間」

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「いざゆかん!パリのナイトライフを探検、案内はマイア・バルー」

チャレンジの面白さはもちろんだが、私はギャラリーを始めてから思っていた、絵を飾って人に買ってもらうだけではないギャラリストの使命はあるのでは?使命と言うと大げさで青臭いが、面白いやり方もあるのではないか、と思うのだ。第一このような成熟しきった業界で、飽き飽きしているのは私だけではないだろう。アートが社会と人を結びつける橋だとしたら、今の社会と今の人をつなぐのは今のアートであり、橋渡し業として生業ができないかと。思う。そこで橋渡しだが、誰を何時渡すか。の問題。今、渡したいのだ。彼が森山大道さんみたいに大成してから世界の皆さんにお披露目するわけではない。日本の今は世界の今である。日本デビューイコール世界デビューにして行きたい、と言うのが我々のビジョンである。

彼が泊まるのは我々アツコバルーが1年前からパリ拠点にしている場所である。数年前まで写真界のスター、ピーター・クナップさん、(ハーパースバザーやELLEの表紙で有名)の写真スタジオだったところ。150m2のスペース天井は4、5mの高さで壁は自由に片手一つで移動できる,偶然だが渋谷の我々の拠点と同じコンセプトである。クナップさんが使っていた暗室を改造して、アーチストが泊まれるような簡単な宿泊施設を作った。石川が最初のレンジデントになった訳だがこれから、日本やアジアのアーチストがパリで制作・発表できる場所になる。

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Galerie Nord

早速、日本人で唯一ロマ族と暮らしているAに案内されて郊外のスクワットに石川が通っている間、我々スタッフはzkopの展覧会の準備に走り回った。案内状は既にネット上に出ていたが、設営、大判のプリントの為のラボ探しなど、私以外の3人のチームは10日間でなんとか立ち上げてしまった。

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「設営中,スタジオに転がっていた木材のクズを集めてプリントを押さえると言うアイデアは石川。」

オープングは3月7日,数えられただけでも150人以上が来場した。面白かったのは多くの人が沖縄がどこにあるか、米軍の基地があるかなど全く知らなかったのだが、エッセンスを理解したことだ。人間の寂しさ、いとおしさを感じると言う人、これは今の社会だ、日本でもフランスでも同じ、今を感じる、と言う人。力を感じる、と言う人、こちらの人はみな意見を言うので面白かった。

これから石川が滞在中はオープニングに来られなかったいわゆる専門家の方々を一本釣りで来て頂だけるように頑張る。我らの腕の見せ所である。そしてあわよくばパリフォトに繋げる。
石川が世界のフォトシーンで活躍できるようにチームの努力は続く。


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「オープニング風景、スキンヘッドはアントワーヌ・ダガタ、彼がたくさんの人を紹介してくれたし、たくさんアドバイスをくれた。感謝!」

これから4月の23日まで石川は滞在して撮り続ける。

1984年生まれの彼はいわゆるY世代、パソコンをおもちゃにして育っただけではなくて,彼には私たちの世代に刷り込まれた西洋コンプレックスがない様に見える。殺気をみなぎらせて(見た目はかなりボケ~としてるが)街を狩人している彼には西洋の権威など路上の犬の糞と同じ。その若さ(馬鹿さ)の突っ張りが私には面白い。そのままの殺意で行けば、(挑戦的言う意味の殺意です)彼は魔法使いになれるかもしれない。

彼が探し求めているのは「それでも生きてやがる人間ども」みたいな感じだとおもう。私も、そんな連中を彼のレンズを通して見たい。でも彼はシャッターを押す前に何も考えないという。いわば本能で写して、後で写ったものを見て自分が何を見たかったのか発見するという。

実はもう既に400枚ほどパリのショットを見たが既にかなり面白い。

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「パリの北のはずれ、移民の多く住む地域だ」

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by Ryuichi Ishikawa


パリのアツコバルーはGalerie Nord (ギャラリーノール)と言う名前です

http://galerienord.fr/post/108162444434/galerie-nord

石川竜一、zkop Paris


赤々舎 HP: www.akaaka.com

アツコバルー HP
http://l-amusee.com/atsukobarouh/

潮田 バルー あつ子
アツコ・バルー
Atsuko Barouh

ラミュゼ主宰 / 通訳・翻訳家


ラミュゼ主宰。パリ第五大学人類学科卒業。フランスのインディレーベル『SARAVAH(サラヴァ)』の運営に1988年より関わる。2002年『L'amusée(ラミュゼ)』設立。滞在型イベントハウス『ラ・ケヤキ』(2003年)、ライブハウス『サラヴァ東京』(2011年)につづき、アートスペース『アツコバルー arts drinks talk』(2013年)をオープン。渋谷を拠点に文化の交流と発信に情熱を傾けています。

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