2015年4月15日 更新

タリン・サイモンとフローレンス・ヘンリー80歳違いのアメリカ女性写真家

IMG_1858.JPG4月中盤,チュルリー公園では赤いチューリップが緑の芝生に映えて、絵はがきが恥ずかしくなるくらいの風景の中、公園内、ジュードポームで開かれている写真展に行った。

2014年横浜トリエンナーレでひと際目を聞いた作品、3つの縦長の額でそろえられたシリーズで"A living man declared dead" (生きているのに死亡認定されいる人)の作家である、タリン・サイモン(Taryn Simon )の展示があった。

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インドである家族の父親が死に、よこしまな親戚は遺産を盗む為に2人の息子を死んだ事にしてしまった。彼等やその子どもたちは生きているのに公文書では死んだ事になっている。生きているのに消されちゃった人たち。そこで彼女は自分もいずれ死ぬ未来の亡霊ではないか。と考えた。血縁とは?運命とは?そこから4年間に渡る彼女の旅が始まった。しかし,そんなドラマチックな事件に出会う彼女もすごい。アンテナを張り巡らせているのか?

作品を構成する18の「章」にはそれぞれ領土、権力、状況、地域といった外部からの力と、産まれて死んで産まれて、と言う太古からの血の連鎖といった自然の力が示されている。左の額の中には3世代に渡る家族の肖像、中央の縦長は巻物を意識したと言う家族の物語。右の額は直感のコーナーと彼女が呼ぶ。(そこがポイントです)18のストーリーは、ボスニアスレブレニツァの虐殺の犠牲者、ブラジルの家族同士の抗争、ウクライナの孤児院、オーストラリアで病気の感染実験に使われたウサギなどまで。


今回初めて見たのは、またまた強烈なシリーズ、"The innoncents" 無実の罪で刑務所に服役した人たちに、逮捕された場所に来てもらってポートレートを撮ったシリーズである。ドラマチックに演出した巨大な写真、黒人の男性が多い、レイプ,強盗などに問われて7年も8年も刑務所で過ごした後、dna 鑑定により無実が証明され釈放された人たち。そんな彼等に「ポートレートとって良いですか?」と聞いて回る彼女って、まじすごい。そこで彼女が言いたかったのは彼等が逮捕されたのは目撃者が写真で犯人と証言したから。つまり、写真は嘘をつく。人の人生を台無しにする。と言う事実。

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彼女のようなアプローチって写真家、と言う枠に収まらない社会的かつ、民俗学の調査がもとにある。でも学者のそれとは違い、アーチストの作品だから彼女の意思と言うかバイアスがかかった上に効果的に額に入れたり巨大に引き延ばしたり、センスの良いアクリルケースに入れられて空間にレイアウトされている。だから研究発表ではもちろんない。これは芸術か?いづれにしろ美術館と言うお宝陳列場所に治めるべきではない、と思う。
「考えさせる作品」と言うようなジャンルがあってこれらはオルタナティブスペースに置かれるべき。公の施設でもそういう場所作りをするべきだと思う。

IMG_1895.jpg同時に展示されているのは同じく女性写真家のフローレンス・ヘンリー(Florence Henri)彼女は1920年代に活躍した実験写真の草分け。そうかあ、こんなかっこいい写真を撮る人がいたのですね。女性が仕事する事がほとんどできなかった時代に実力で存在感を示したのはすごいと思う,もう一人同時代ジェルメーヌ・クルル(Germaine Krull)という女性写真家で実験写真のすごい人もいた。建築の鉄骨を撮ったシリーズは有名。いづれもマン・レイと同時期である。1893年生まれのフローレンス。1897年生まれジェルメーヌ。1890年生まれのマン・レイ。でもマン・レイだけが有名なのは彼女たちが女性だったからかも知れない。いづれにしろこの80年で写真の可能性が飛躍的に伸びた事、めまいがするようであった。
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潮田 バルー あつ子
アツコ・バルー
Atsuko Barouh

ラミュゼ主宰 / 通訳・翻訳家


ラミュゼ主宰。パリ第五大学人類学科卒業。フランスのインディレーベル『SARAVAH(サラヴァ)』の運営に1988年より関わる。2002年『L'amusée(ラミュゼ)』設立。滞在型イベントハウス『ラ・ケヤキ』(2003年)、ライブハウス『サラヴァ東京』(2011年)につづき、アートスペース『アツコバルー arts drinks talk』(2013年)をオープン。渋谷を拠点に文化の交流と発信に情熱を傾けています。

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