2015年2月15日 更新

イヴ・ダングルフォーを訪ねて


グルノーブルの駅についたのは待ち合わせの20分前だった。駅を出たらもうアルプスの山々が見える。スキーを肩に担いで歩く若者が駅にそのまま入って行く。ああ、ここはアルプス、氷河の上にできた町なんだ。と実感する。駅の構内に写真で見たイヴさんに似たような顔の男性がいるな。とは思ったが、まさか20分前に来ているとは思わず、スルーして駅を出て冬の日だまりでしばし待っていると彼のエージェント役のマガリーを伴ってさっきの男性がやって来た。やはり早く来て待っていたのだ。
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駅で出迎えてくれたイヴとマガリー

開口一番、日本で自分の展覧会をやっていただけるのは大変光栄だ。本当にありがとう。と感謝の言葉。礼儀正しいイヴさん。

矢継ぎ早に日本の庭が大好きだ。とか天皇陛下が話をするときに日本人は土下座をする(玉音放送の事?)とか,インターネットと本で得た知識を披露する。細かいところにすごく詳しい。記憶が良いのですね。と言うと、自分は学校は少ししか行かなかったが,記憶力は人並みはずれているのです。という。後で彼のアパートで見せてくれた絵でも,ナポレオンの友人関係とか歴史的な出来事での人物の名前の記憶が半端なかった。

グルノーブルには昔の知り合いで、今は引退している法律の先生がおられる。彼はアールブリュットのコレクターで以前TAGAMIの絵をどうしても買いたいと言ってくれた人である。その彼にイヴの絵の写真を見せたら、興味を持って自分も是非会いたいし、自分のコレクションも見せたい。と言うので、3人でまず彼のアパートを訪ねる。
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コレクターのクロード・アブリアルさん。所狭しと飾られた絵,床にも、絵の前にも後ろにも絵が・・・

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世界中のアールブリュットに興味があるそうで,有名無名関係なく時にはインターネットで検索して買ってみたりもするという。イヴさんしきりに質問したり、興味津々な様子。

昼食はマガリーがグルノーブルで一番感じの良い、と言う素敵なレストランへ。イヴはそこのシュークルートが好きだそうである。
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壁画の下に並んでいる雄鶏のコレクションがイヴさんのお気に入り。

テーブルでいろいろ話しているうちにイヴさんとコレクターの先生に共通の友人が多数いる事を発見したり、近所に知り合いが住んでいたり、と小さな町の事で、ローカルな話題で話は盛り上がった。それが日本人のアツコが我々を結びつけてくれたとはね。と感謝されてまんざらでもない私。やれ,ワインだ生牡蠣だ肉だデザートだ。と,これをやらしたら誰にもかなわない。

フランス流、アールドヴィーヴルで気持ちよくなって本来の仕事を忘れそうに。そうそう夕方の列車でパリに戻らないと行けないのよ。

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いたるところアルプスの山が見える町


町から少し出たところにある公団住宅?の様な団地に彼のアパートはあった。日本のレベルで言うとかなり素敵なメゾネット形式で2階の彼のアパートは大きな窓からアルプスが見える明るくて気持ちのよい空間。そしてすごくミニマリスト。
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日本で言ったらかなり素敵な集合住宅。躁鬱病で国の生活保護と住宅の支給、日本ではそうは行かない。

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まず驚くのは仕事机、こんなに整理された画家の仕事場は見た事がない。

「私の頭の中は複雑でごった返しているので物はきちんと整理していないといけないのです」キッチンもしかり、冷蔵庫の上の野菜も整列、風呂場の歯ブラシも整列。マガリーに聞いたら今日だけではなくていつもそうなのだと言う。

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まず我々のギャラリーが選んだ絵を実際に見せてくれる。コレクターの彼は大興奮でいちいちすごいとか、オーララ!とか叫んでいるのでイヴさんはそんなに褒められたらおかしくなってしまう。と自分は立ったままでもじもじしている。彼の絵には一枚一枚に物語があって絵の上にシュールな話と実際にあった歴史的なイベントが混在している。これは日本語にある程度訳しておけば見る人も楽しいだろう。

我々はマガリーが送ってくれた写真で選んでいたんだが写真を撮っていない新しい作品や大型の作品も持ってくる。
「これも良かったら日本に持って行ってください」と頼まれる。メモのように小さい紙に書き留めた絵のアイデアもとても面白くて、これも持って行く事にする。

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冷蔵庫の上に整然と並ぶ野菜

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メゾネットになっているすてきなアパート。

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窓を開けるとそこにはまたもやアルプス,小鳥がえさを食べに来て、遠くまで林が広がっているではないか

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帰りがけに借りたトイレでは浴室にこれだけの物しかなかった、そして整然と並んだ品々、こんなだらしない浴室で恥ずかしいから、と言っていたがどこがだらしないのか?

絵は20歳の頃からずっと描いている。200枚描きためて、当時すんでいたカルフォルニアで出会った美大生に見せてどう思うのか聞いたら,クソだと言われて全部捨ててしまったという。「今だったら誰に何と言われようが平気だけど20歳の頃は愚かだったから。」それ以来彼は誰に絵を見せる事もなく一人隠れて描いていた。どれほど多くの才能が心ない阿呆のおかげで葬り去られていくのだろう。見る目のない人って多いのだ、美大生とかダメな画家とかが特に危険だ。

下手な絵には2種あると思う。単に練習が足りない場合。やはり300枚描いて10枚の残すくらいでないと鑑賞に堪えられない。次は技術的にはOKだがセンスないひと。その両者ではなくて描いている人はどんなへんな絵でも下手とは言えない、何かのパワーがある。だからイヴの絵をクソと言った人はかなり分かっていない奴だった。

イヴの絵がやっと目利きに出会ったのは刑務所に入った後だった。放浪者の彼がやっと腰を落ち着けて絵を描けたのが塀の中だった。カルチエ財団と著名なコレクターに認められたが発表するにな至らなかった。2013年にアート好きの図書館司書マガリーの目に留まるまでは。

マガリーは3人のまだ小さい子のお母さんだがエネルギッシュに行動に移し、あっという間にローザンヌの著名なギャラリーに売り込み、一目惚れしたギャラリー主はヨーロッパの主要なコレクターと美術館に売る事に成功した。

2015年も3月には東京の我々のギャラリー、5月には九州。フランクフルトでは同じく4月。そしてパリ。と今年もイヴの快進撃が続く。60歳で開花した才能をこれからも堪能してほしい、優しいイヴさんはユーロ高で泣く日本の人のためにかなり安い値段で売ってくれる事になった。主要な美術館に買い上げられている彼の作品はこれから値上がりする事はまちがいない。

アツコバルーarts drinks talkでの展覧会↓
2015年2月28日(土)〜3月29日(日)
[B] イヴ・ダングルフォー 日本初上陸!『フレンチ アールブリュット』展
YVES D'ANGLEFORT FRENCH ART BRUT!

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水〜土:14:00 - 21:00/日・月:11:00 - 18:00/ 火:定休日
¥ 500(includes one drink)
イヴ・ダングルフォー web site

潮田 バルー あつ子
アツコ・バルー
Atsuko Barouh

ラミュゼ主宰 / 通訳・翻訳家


ラミュゼ主宰。パリ第五大学人類学科卒業。フランスのインディレーベル『SARAVAH(サラヴァ)』の運営に1988年より関わる。2002年『L'amusée(ラミュゼ)』設立。滞在型イベントハウス『ラ・ケヤキ』(2003年)、ライブハウス『サラヴァ東京』(2011年)につづき、アートスペース『アツコバルー arts drinks talk』(2013年)をオープン。渋谷を拠点に文化の交流と発信に情熱を傾けています。

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