2013年8月11日 更新

ガツンとキース・へリング

Keith Haring
The political line
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と称された展覧会が2013年8月18日までパリ市近代美術館で開かれている。
キースへリングのT-シャツやバッジ、彼のアイコンを使用したCMなど、世界中の人が知っているポップアートのスターだが、今回の展覧会でその名のように政治的要素の強い人とは恥ずかしいことに知らなかった。強いどころか展覧会を見ると、私の知っている、かわいいハートや犬の絵などはほんの一部のコマーシャルなイメージで彼の本領はかなりエグい直球の社会批判であったことに驚いた。
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キリスト教の教育を受けた白いアメリカ人の家庭で、ゲイ。20歳でNYに出て来るや地下鉄や路上でゲリラ的に絵を描きだし、瞬く間に時代の寵児となる、それから12年間、エイズで命を失うまで(32歳で、なんと悲しい)描いて描きまくった。まず始めたのは、広告の写真や文字を切り抜いて、挑発的な偽ポスターを張って歩いた。

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Reagan:ready to kill


1980年(22歳)で始めたのが、Subway drawing,地下鉄のポスターを張る前の黒板に直接白いチョークでタグをして歩いた、その数5000件以上という。1日40枚。警察に捕まらないように超スピードで書いて逃げる。ということを毎日くりかえしていた。それは肉体とアートのパフォーマンスであり、アートはみんなのもの、というメッセージでもあった。

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彼のテーマは最初から、個人対国家、資本主義、宗教、マスメディア、人種差別、反原子力など、恥ずかしくなってしまうような若者の反抗をめっちゃかっこいいデッサンで埋め尽くした。
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大きな犬に踏みつぶされる個人

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USAという資本主義の化け物がドル紙幣と十字架、そして星のマークとともに君臨する下にはおびただしい死体が。

宗教、組織化された宗教が、腐敗や個人の弾圧をする。巨大な絵「十戒」かなり激しい性描写。


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性といえば彼とは切り離せないテーマであった。最初に言ったように日本のおしゃれなお店で売っているグッズからは想像できない露骨なペニスの大群。大股を開いた人間から頭を出す赤ん坊。人は交わり、子供を産み、それが人類だ。というあっけらかんとした事実、文明が巧妙に隠している生と死の姿が実は個人の人生に対する謳歌で、国家権力にとっては脅威なんだよ。と彼は声を高々叫んでいる。

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彼は絵画が一部のエリートにだけ見ることができるということに反発してアートを街に、と描きまくってたのだが、死後、こんな風に立派な美術館で立派な額に入れられ、彼の一生をたどるヴィデオには彼が好きだったヒップホップではなくクラシック音楽がBGMに流れているのをどう思ったろう。みんな死んで偉人なると、必ずクラシック音楽をくっつけられてしなうのはなぜなのだろう。生きて反抗している時は中指立てて、夜はクラブで踊りまくっていたに違いないのに。
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スリーマイルズ島の放射能漏れ事故ですでに反原発を訴えて行動していた彼は88年に広島を訪れですごいショックを受けたという。
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彼は、まずものすごくうまくてすぐれたデザイナーでレイアウトのセンス抜群、ほんと優秀な画家。
彼は頭で描いていない。腕で描いている。下書きも何もしなかったそうだ。だから線がいきいきして面白い。
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私は彼の絵を見ているとヒップホップが聞こえてきて、そうだ彼のアートは扇動的で若くて気持ちが良い。思いきりダークでエグイテーマでもなぜがすっきりしてくるし気持ちが良い。おとなしく美術館にいる気分ではなくなってくる。「書を捨てて町に出よ。」じゃなくて美術館を出て町で絵を描こうよ。という誘いが画面からワンワン聞こえてくる。いいぞ!きてるね。こういう胸ねぐらをつかんで引っ張りまわされる絵って大好きだ。
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今、20歳の若者はキースへリングのようにはじけるだろうか。Yesと思う。けれど今我々を取りまく時代はもっともっと悲劇的。だって彼が阻止したいと思っていた原子力のお化けはもう本物の生き物になってしまったのだから。水と空気は止められない、止められない物質に混じって日本発信の放射能が世界に散っている。彼がいたらどんな絵を描くのだろうか。
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潮田 バルー あつ子
アツコ・バルー
Atsuko Barouh

ラミュゼ主宰 / 通訳・翻訳家


ラミュゼ主宰。パリ第五大学人類学科卒業。フランスのインディレーベル『SARAVAH(サラヴァ)』の運営に1988年より関わる。2002年『L'amusée(ラミュゼ)』設立。滞在型イベントハウス『ラ・ケヤキ』(2003年)、ライブハウス『サラヴァ東京』(2011年)につづき、アートスペース『アツコバルー arts drinks talk』(2013年)をオープン。渋谷を拠点に文化の交流と発信に情熱を傾けています。

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