2012年9月29日 更新

経済学では(たぶん)予測しなかった私たちの行動

DSCN9754.JPG先週末の3日間、ラ・ケヤキでハンドメイドマルシェ第3回目を開催した。「若い手作り作家の登竜門になってほしい。」という手芸作家、岩切エミさんの企画で、今回は16人の作家と、料理2グループ、マッサージ、ネイル、まつげ、バー、も集合して、賑やかな展覧会になった。

今回も含めて作家展を幾度となく催してみて、お客さんは何をどういう動機で買うのか(買わないのか)、と常に不思議に思っていた。安いから買うのではない、きれいだから、というだけで買うのでもない。

私は経済学に疎いので断定はまったくできないが、消費の法則って、他より安いから買う、という価格競争の理論とか、みんなが持っているから欲しい、という横並びしたい欲望とか、反対に誰も持っていないから欲しい、そういった数種類のパターンに沿ったルールがまかり通っていたのではないかと思う。

でも今、先進国の女性たち(今回は女性が対象だったから、そう言います)は、いくら安くても、いくら個性的ファッションでも、買いたくない。という人がたくさんいるのです。


P9230021.JPGお客様と話しながら皿の上に乗せた作品を楽しんでます


できれば貨幣を媒体とした経済活動には参加したくない、とまで思う人もたくさん出てきました。60年代にカナダで始まった大きな組織、(あああ。どうしよう名前忘れた!)は物々交換の大きなマーケットです。「私は屋根の修理ができます。交換でアイロンかけをしてくれる人を探しています。」と言った広告を出すフォーラムのようなものです。ソーシャルネットワークのさきがけですね。今では日本でも「わらしべ長者」、というようなサイトがあります。都会の若者の間ではお金も大していらないよ。という人たちも増えています。服や日用品はフリマで100円あれば買えるし、音楽や文化はタダだし、アパート代さえ払えれば、豊かに人生を送れる。ストレスある職場で夜中まで必死に働くことに何の価値も見出していないのです。
多くの人が消費に喜びを感じているのも事実ですが、こういう、学者がたぶん予測していなかった行動をする人たちがあながち極端な例ではないと思いますよ。

買うのはものじゃないよ、心のひときれだよ

我々の展覧会に来てくれる人たちは、たぶん、進んだ意識をもっている人たちです。(資本主義から見ると退化した考えとも言えますが)そのような人たちがなぜ作品を買うのか。というと、これまた規則などありませんが、どうやら「心意気」を持って帰りたい。と思ってくれるのではないかと思います。企画者の岩切さんもそのように感じていると、言ってました。もちろん稚拙な作品では「頑張ってま~す」と言っても「え、ちょっと、ごめんなさい」というところですが。頑張りではなくて、自分はこれが好きだ、これはしたい。これしかないのです。というようなオーラが作家から発せられているのを感じて、お客様は「よっしゃ、あんたを応援してあげようじゃないの。」ということで買ってくださるのだと思う。奇麗なブローチやネックレスの向こうに感じられる作家のハートを買うのではないかしら。

そう思うと今社会現象にまでなっているAKB48もそういうことらしい。毎日秋葉原でショーをやって、最初はつたない少女たちが、がんばって、少しづつ歌が歌えるようになりきれいになっていくのを応援するのがだいご味らしいのです。

こういうのを参加型(応援型?)消費とも言うのでしょうか?今回参加していただいたシャプラニールさんはフェアトレードの会社です。バングラやネパールの人たちが自立できるようにクラフトを、搾取しない値段(フェアーな値段)で販売する会社です。去年震災支援で、三陸の子供たちの絵葉書を展示する階を同じラ・ケヤキで開いたことから今回の参加になりました。

P9230001.JPG海の向こうでもチクチク、バングラの女性たちがやってます


先週末のイベントにお客様として来てくださった株式会社福市 www.love-sense.jp の高津玉枝さんはフェアトレードと震災被害者支援で大活躍している人です。震災の1ケ月後、阪神での経験から被災者たちが現金収入を得る機会がないことを心配して女性たちが手仕事で簡単にできる商品をデザインして販売することにしたそうです、そうやって作ったブローチ、840円のうち50%が作った人にわたります。1年間でなんと1千万円以上の現金が150人の編み手さんに渡りました。この事業には多くの小売店やデパートが例外的にかけ率80%で請け負ってくれたそうです。まさに、生産者、デザイナー、小売店、消費者が心でつながって、その数字を出した。というすばらしい事業をあっと今に成功させた人です。現在、被災者はまだ困っているけれど震災は少しづつ忘れられていく。次の手を考えているそうです。


でもお金も大事ですから


と、ここまで書いて、自分の考えの思い上がりに気が付きました。だって三陸の女性たちは、家や家財道具が流されて、現金収入が必要なのでしょ?と一方で認めて、方や我々は進んでいる意識の持ち主だから貨幣経済なんてもう嫌だ、とスノッブなことを言っているのですから。
確かに一次産業の近くに住んでいる人たちは海の幸、畑の幸をみんなで分けあうからお金で米や食料を買わなくても済んでいます。自分たち都会人もどこかでそんな暮らしにあこがれているくせに都会の便利や安全を手放す気はないのですから。ですから私の言うことは所詮都会者の寝言にすぎないのでしょう。しかしここまで言ったのですから自分の矛盾を、まずいなと思いつつも話を進めますと、ヨーロッパのスーパーではチョコやコーヒーの売り場に普通にフェアトレードの商品がおかれていますが日本はまだまだ。よその国でどんなことが起こっているかの関心度がまだ低いのですね。でも、これから大きくなるマーケットだと思います。想像力を働かせればコーヒー農園で働く人は賃金をちゃんともらったほうがこちらも何かすこし嬉しい気がします。


参加する楽しさを買う

P9230010.JPG(子供たちに詩の朗読を聞かせたりもします)

2-3年前に知ったアメリカの会社、キックスターターはクラウドファンディングのさきがけでした。
http://www.kickstarter.com/

いつもユーモアのセンスが聞いた自己紹介ヴィデオがあって、たとえば「僕たちはサンフランシスコとニューヨークでライブハウスを開きたいんです。こんな音楽をこんな値段でそれには...ドル必要なのです」みたいな内容です。それぞれ投資に見合ったバックがあります。映画だったら試写会にご招待もあれば中国系の監督の映画出資では「私のおばあちゃんは料理がうまいから、出資してくれたら映画の帰りにうちでディナーにご招待します。なんて言うのもある。いかにも天真爛漫、良いアメリカの香りがたっぷりのサイトです。当時私は夢中になってこれを日本でもやりたい。と騒いでいたらこれは日本では無理だ、(なぜか知らないが、いつもそういうことを言う人っているのです)と言われたが、そして実際私のスキルではこういうことはできないので、しょうがなかったのですが、いいアイデアというのは国境を超えるものです。今や日本のみならず、それが世界にも広がっているようです、先日イランの巨匠アッバス・キアロスタミがクラウドファンディングでお金を集めて映画が作ったらしい。『マルコヴィッチの穴』のチャーリー・カウフマンは60日間で3,000万円超を出資してもらったとか、あっという間に大きなビジネスになっているのでおどろきました。

楽しい退化

世界の経済がどういう方向に行くのか、「楽しい退化」をしている我々先進国の人間は、「激しく進化」している中国の野望にあっけなく征服されていくのかもしれません。しかしすでに物欲の虚しさを経験した人々は違うところでの豊かさを模索し始めています。中国の人たちがそうなるのも時間の問題でしょう。壁にぶち当たらないと、他のやり方を模索できないのが人の愚かさです。そう言っても人間は捨てたものではなくて、人類は少しづつお利口になっていると思いたいです。そのうち国家とか人種、宗教の違いなんて皆の顔がすべて違うくらいのことだよ。といえる「イマジン」みたいな世界が来るように。

私ってやはりユートピア好きです。

潮田 バルー あつ子
アツコ・バルー
Atsuko Barouh

ラミュゼ主宰 / 通訳・翻訳家


ラミュゼ主宰。パリ第五大学人類学科卒業。フランスのインディレーベル『SARAVAH(サラヴァ)』の運営に1988年より関わる。2002年『L'amusée(ラミュゼ)』設立。滞在型イベントハウス『ラ・ケヤキ』(2003年)、ライブハウス『サラヴァ東京』(2011年)につづき、アートスペース『アツコバルー arts drinks talk』(2013年)をオープン。渋谷を拠点に文化の交流と発信に情熱を傾けています。

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