アツコバルー ATSUKOBAROUH arts drinks talk

finished 2015.10.31 Sat - 11.22 Sun

初沢亜利 写真展『周縁からの眼差し』
~東北・北朝鮮・沖縄 報告~

Ari Hatsuzawa Photo Exhibition

2015.10.31 Sat - 11.22 Sun
Wed - Sat 14:00 - 21:00
Sun & Mon 11:00 - 18:00 
closed on Tue
¥500 (includes a drink)

周縁からのまなざし、そして「報告」                         

2015年 秋 アツコ・バルー

2012年に東京画廊BTAPで開かれた「Modernism 2011-2012 東北-東京-北朝鮮」から3年後、沖縄に長期滞在して撮りためた作品を加えた今回の展示は、東北ー北朝鮮ー沖縄、3つの周縁の地からの視点、と言う事になります。そして大事なポイントは「報告」と言う言葉をタイトルにつけた事です。これは写真展でありながらソーシャルアートなのです。レンズの向こう側と彼自身がどう関わっているか、に重点が置かれています。

周縁から、と言うと、周縁からどこを見ているか、気になるところですが、これがまさに彼のテーマ。それは東京と言う大都市であり、その中心で育った自分の事をさしているように思えます。周縁の地で暮らす人々と自分とのギャップや反対に似ているところを発見しながらパズルのピースを拾って行くような作業が行われているのではないでしょうか。

2011年の大震災後、特に日本のアーチストは対象に『関わる』事に敏感になりました。今回の安保法案反対デモでわかるように、一般市民である我々もやっと社会に『関わる』という意識を持たざるを得なくなりました。

関わって行く段階で、初沢の感じた矛盾や悩み、よそ者に何がわかるか、という彼等の反発も含め、他者と関わる事の難しさ。それでも関わらずに居られない必要性があって作品が生まれたのだと思います。『報告』の部分に彼の周縁に向かって行く意義が見つかるはずです。

今回の展覧会は彼の過去5年の集大成とも言うべき大きな展覧会です。

「権力と写真」

初沢亜利

2010年〜2015年、被災地東北、北朝鮮、沖縄を廻り3冊の写真集を出版した。
東京でしか暮らしたことのない私が日本の周縁に降り立ち、権力の中枢を眺め返した時、我が身に染み付いた無自覚な権力的思考に直面させられることになった。
権力者の善意すら暴力と紙一重であることを改めて学ぶ年月だった。
文化的背景も、直面する課題もそれぞれに固有であり、3つの地点を並列することは、それこそ暴力の上塗りになりかねないが、逆照射される東京景だけは、どの地点から見ても変らなかった。
中央と地方、旧宗主国と旧植民地、多数民族と少数民族。
問題の所在が抑圧される側ではなく抑圧する側にある、という自覚は多くの人にとって受け入れ難い。
北朝鮮問題、沖縄問題、言葉そのものが暴力性を露呈する。
哀れな被災地、極悪非道の北朝鮮、楽園としての沖縄。
眼差す側が存在論的不安から逃れるために、不都合な周縁を特定のイメージで囲い込むことから暴力はスタートする。
イメージ化された現場の内奥にある「日常」を撮っているのですね?という軽率な質問にはこう答えるしかない。世界には「日常」しかありません。

確かに世界は不条理と不正義に満ちている。そして、不正義を解消することは最終的には抑圧者にしかできない。
北朝鮮との国交正常化も、沖縄への米軍基地の過剰負担も、我々本土人、日本人の手で克服するほかはない。
全ての不正義を解消してもなお不条理は残る。
私の意識で制御できない、私の意のままにならない。それが世界と写真に共通する本質だ。
世界にも写真にも中心はなく、撮影者の意思そのものも中心点にはならない。
「必然」に引き寄せたい欲望と不安の先に「写真」はいつでも存在する。
「私」が安心を求めてカメラを用い、安易に他者や地域に同化し状況を物語化すると写真は必ず閉塞する。
世界は私の思惑と関係なく存在している、という不条理に耐える胆力こそが、写真を解放するための唯一の道ではないか?

抑圧−非抑圧の二項対立のどこに立っているかを片時も忘れず、同時に多方向的に入り乱れる意思を集約することなく包摂し印画紙に定着させられるか。
私は不正義を解消しうる人間性に希望をもち、なお逃れられない不条理に喘ぐ人間を肯定する。
過去、現在、未来に渡り人間存在を全肯定すること。それが私にとっての写真的美学だ。

抑圧者として周縁を廻る5年の旅はひとまず終わった。
撮り手と見る側が美意識と不条理を共有しつつ、なお内なる不正義に意識を開いていく。
そんな展示を目指している。
それが写真家の挑戦であり、見る側にとっての挑戦でもある。

初沢亜利 写真集 『沖縄のことを教えてください』 好評発売中!
定価:3,800円+税|297×285mm|176ページ|並製|デザイン:近藤一弥
発行: 赤々舎
http://www.akaaka.com/
info@akaaka.com
Tel: 03-6380-0908


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Event

◉10月31日(土) : 19:00~21:00 入場無料
オープニングパーティー

◉11月5日(木) : 19:00~21:00 ¥1000 (includes a drink)
初沢亜利 × いとうせいこう トークイベント 
※当日受付のみ。会場がいっぱいになりましたら入場を制限させていただきますので、予めご了承ください。

Profile

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初沢亜利

1973年 フランス・パリ生まれ
上智大学文学部社会学科卒業
第13期写真ワークショップ・コルプス修了
イイノ広尾スタジオを経て、写真家として活動を始める

受賞
2013年 第29回東川賞新人作家賞

個展
2000年 Juna21「Tokyo Poesie」 新宿ニコンサロン
2001年 「humanite」 AKI-EX GALLERY
2003年 「Bagdad」 AKI-EX GALLERY
2003年 「Baghdad 2003」 SPACE FORCE
2007年 「東京午前5時、200人のポートレイト」 ARIKA-ART-SITE
2012年 「Modernism 2011−2012 東北-東京-北朝鮮」 東京画廊

出版
2003年 『Baghdad 2003』 碧天舍
2012年 東北被災地写真集『True Feelings -爪痕の真情-』 三栄書房
2012年 北朝鮮写真集『隣人。38度線の北』 徳間書店
2015年 『沖縄のことを教えてください』 赤々舎